男はつらいよと天人合一

こんにちは。

火鉢の道具店 三浦でございます。

春の陽気を皆様いかがお過ごしでしょうか。

 

ここ最近、男はつらいよを見続けておりますが、昭和の頃の自由さには驚かされるばかりであります。もともと大好きだった映画ですが、久しく見ておりませんでした。

ところが先日、中学生の女の子が「男はつらいよ」のファンだとのこと。しかも1から全て見たと。それでは我もとなったわけでありまして、1から28まで見たところでございます。とくに初期の頃の「男はつらいよ」には、火鉢が良くでてまいります。お客さん用の予備の火鉢が重ねてある旅館であったり、火鉢を脇に酒を酌み交わすシーンなどなど。

男はつらいよ より

 

「男はつらいよ」について詳しくはないのですが、感動する場面の1つに「自然と人」のシーンがございます。

誰もが感動したり、美しいなと思うこのシーン。実はこれが本当に美しいのであります。この何気ない挿絵のようなシーン。道端の花と広い空。その奥を農作業に向かう人が歩いている。ですとか、見事な田舎の大自然の中を、柴又で喧嘩して飛び出してきた寅さんがブラブラ歩いている。 はたまた、トラックの荷台に旅芸人が乗って(今なら100%アウト!)巡業の旅をしているシーン。大自然の中に遠く過ぎ去っていくトラック。 どれも実に感動的なシーンなのであります。映画中、かならずこうした何気ない自然と人の融合を描いた、なんのコメントも説明もいらないシーンが出てまいります。これを見るにつけ、「ああこれこそが、天人合一だなぁ。日本人には(もちろん中国人にも)根付いた感覚なのだろうなぁ。」と思ったりしながら見ております。

 

そもそも「男はつらいよ」のオープニングのシーンが毎回江戸川の土手です。遠くを行き交う人々と広い土手は、柴又の生活を一気に伝えるパワーがあります。

そういえば生前は日本でも大人気だった、かのピーター・ドラッカー先生は、日本画の第一人者だったそうですが、恐らくこうした中国や日本の古い絵に、天と人はすべて1つである。という思想に共感したのかもしれません。故に最後のあたりで日本語のみ発刊された本に「もしかすると日本人が世界を救うかもしれない。」と書かれていたのかもしれないなと、夢想するのであります。

日本の昭和をありのまま伝えてくれて、根底に眠る思想に共感し、感動させてくれる映画を作ってくれた山田洋次監督と、最後までがんばって演じてくれた寅さん初め、タコ社長さまたちに感謝したいなと、本気で思ってしまいました。

 

現代はより良い時代になったと思いますが、昔の日本人、それこそ江戸時代や明治時代の日本人には、今の日本人では到底感じることの出来ない何かを感じていたのではないかと思ったりしました。そんな当時の思いを、古い火鉢を手にするたびに少しでも感じ取れたら良いなと思いつつ。

おわり。