70年前の新品「桑の手あぶり火鉢」2つめ
昭和の火鉢の新品な上に桑の木
本当はどちらか片方は自分でずっとつかおうとおもっていました。でも昔師匠が「良いものを自分で使おうとするな。」という言葉が思い出されて断念いたしました。これは何度も体験しています。自分で使い出すと良いものとの出会いが失われるのだとか。本当なのかどうか確かめておりませんが。
1つめと対の2つめです。たまたま上に入っていたものを1つめとしているだけなので、どこかでNO.1 NO.2みたいな区別はございません。サイズはもちろん、木目も同じ木材から採っていますのでほぼ同じです。どちらも黄金色の見事な桑の木の指し物です。
70年前の新品「桑の火鉢」
これまた珍しい新品の骨董の火鉢。骨董屋的には昭和につくられたものは新物(あらもの)として骨董とは言わないのですが今や令和です。
昭和20年代は充分骨董といえます。戦後になって桑の木の戦争需要がなくなったからでしょうか、見事な桑の木でつくられた火鉢です。全く使用した形跡がありません。
持ち主は杉並区にお住まいの方。杉並区はのらくろの田河水泡さんはじめ当時の漫画家、作家、そして作曲家が住む傾向にありました。今でこそ都会の仲間入りしそうな杉並区ですが当時は荻の生い茂る田園広がる田舎でした。今も農地の割合が世田谷区並に多いです。
当時の荻窪です

田河水泡さん|すぎなみ学倶楽部より
もっとも貴重な木材「桑」
火鉢で使われることの最も少ない桑。理由は色々あります。
- カイコのご飯
- 漢方に多様される
- 桑の樹皮から綿を作れる。戦争中の軍服に。
- 食用
これらどれもケヤキや黒柿にはない使われ方です。また幹も太くても50cmです。
ただし磨くと黄金色に輝くことで知られていました。そのため火鉢の中でもっとも貴重な木材でめったに使われることはありません。
桑の見事さの極み「島桑」
桑がいかに貴重で見事なものであるかは師匠と、桑に詳しいお客様に教えていただきました。
なおWikipediaにもありますが正倉院の楽琵琶や阮咸もクワですし、薩摩ビワなどビワの最上級は桑が使われます。三味線も桑のものがあるようです。なお最も良いとされるのが島桑と呼ばれるもの。実はこの島桑の火鉢はこれで3つめです。うち1つは一部にだけ使われていました。
過去500台以上の手あぶり火鉢を見てきて桑の木の火鉢はこれで3台目ということになります。しかも驚きの新品。
骨董のある暮らし
骨董のある暮らし。火鉢のある暮らし。そのどちらもが新品の桑の火鉢で実現できました。しかも対で譲ってもらうことが出来ました。
手あぶり火鉢はもともと2つ1組で作られていた
ということをWikipediaに書いたのも私ですが何故かその様子の写真を全く撮影していませんでした。
あまりに当たり前過ぎたので。今回もさっそく桐の箱を壊してしまおうかとおもったところでフト我に返り急ぎ写真を撮りました。
このようにかならず同じ木材で全く同じものを2つ作ります。木目は異なりますが同じ木材でないといけません。
理由は明白。昔の人はこの手あぶり火鉢を1人1台。2人でそれぞれ目の前においてお話するからです。寄り合いとか商談など。火鉢は大事なお話のときの大切なコミュニケーション・ツールでした。

桑の手あぶり火鉢のサイズその他
本体のサイズ
30cm x 30cm x 23cm
30cmの正方形で高さが低めな火鉢は鉄瓶をかけてお湯を沸かす目的もあってつくられるサイズ感です。なので稀に「瓶掛(びんかけ)」と呼ぶお年寄りもいらっしゃいます。少しでもお茶をたしなんだ明治生まれ、大正生まれの方に多いです。
灰をいれる炉 おとし
24cm x 24cm x 15cm深さ
必要な灰は3kg
この火鉢に見合う道具
このページの下の方でご紹介いたしますが、五徳は小・中・大どれでも大丈夫です。意外と大はオススメ。
かなり見事な火鉢なので虫喰五徳 五寸もオススメではあります。
火ばし 灰ならしは お好みで。
ただ職人さんの引退つづきで種類が限られています。骨董の良い火箸・灰ならしもみつからず。本当にすみません。
炭はくぬぎ炭かナラ炭からスタート!
備長炭は火力が強くて良いですが、初めての場合はまずはクヌギ炭で火鉢に慣れていただいて、それから不揃君1kgだけご購入いただき、使用の際はクヌギ炭3〜5個にたいして不揃い君1つだけを混ぜるようにするとよろしいかと存じます。