総欅
ソウケヤキと読みます。4面とも一枚のケヤキの板を使っています。明治の前期までは手あぶり火鉢にも、分厚いケヤキの板を使っていました。時代が進むに連れ、突板(途中でつなぎ合わせたもの)を使ったり、板が薄くなっていきます。火鉢は昭和30年位までつくられていましたが、時代時代によって材料も作り方も異なります。
江戸時代につくられた木製の手あぶり火鉢は、概ねこのような分厚い板を使っていました。そのため重さも5kg弱ととても重いです。昭和に入ると2kgを切ります。
総欅の手あぶり火鉢は、過去300台以上の手あぶり火鉢の中でも10%程度しかありませんでした。さらにこの江戸時代のものとなると、1%程度の割合でした。
古い火鉢が手に入りやすかった10年以上前でも貴重でしたが、今ではこのタイプは間違いなく年に1つも出てまいりません。今回、山形県は庄内の骨董の師匠に見つけてもらいました。
ほぞ組
ほぞ組は、木と木を組み合わせる方法。とても沢山の種類がありますが、江戸〜明治の中頃までにつくられる、総欅の火鉢は、蟻組接(ありぐみつぎ)と呼ばれる組み方で組まれています。
この綺麗な△が特徴。このほぞ組は、最も木の伸縮に強いので、最も固いケヤキや黒柿を組みには最適な手法です。現在はこのほぞ組をくむための工作機械がありますが、当時はノミから自作して、組んでいきます。また江戸指物と木工の組み方には違いがあり、この場合は4面を全て同時に組み合わせていきます。
一枚板は反ったりゆがんだりしますが、それを防ぐのが江戸指物の技でした。それでも木はつねに湿気を吸ったりはいたりしていますので、直射日光に当て続けますと木材にヒビが入ります。
木材がなんであれ、木製の火鉢に共通した気をつけるべき点です。
黒柿と孔雀杢
骨董の木製の火鉢で最も使われる木材は、ケヤキと黒柿です。桐も多いです。この3つはどれも耐熱温度が400度以上ありますので、熱に強いというわけです。黒柿は火鉢の上部、淵の部分につかわれることがほとんどです。稀に総黒柿といって全て黒柿でつくられるものもありますが、通常はフチ部分、まれに取っ手に使われます。これは色が黒いので見た目が締まって見えるからだと思います。
この黒柿はまさにあの柿の木です。柿の木1000本に1本の割合で、墨が落ちたと表現する木材が見つかります。いわゆる黒い木です。これが黒柿です。
ケヤキには玉杢という珍重される杢目があります。黒柿は孔雀杢です。ある意味、ケヤキの玉目よりも珍しいもので、丸い円がみられます。ケヤキの玉杢は木が幼い頃に剪定された跡だとも言われていますが、黒柿の孔雀杢はなぜそういった模様ができるのかわかりません。
孔雀の羽模様ににているところから孔雀杢と呼ばれます。 あまりに貴重な杢目なので火鉢でしたら大型の長火鉢には使われることがあります。あとはパイプなどの小さなもの。 手あぶり火鉢に孔雀杢が使われたのを見たのは、300台以上販売し、500台近く見てきて2つ目です。それほど珍しい木目が現れています。
