手あぶり火鉢 第三百二弾 江戸中期〜後期 五七の桐の文様

江戸時代の中期〜後期につくられたもの。桐の火鉢。
一番の特徴は、「五七の桐」です。
7枚と5枚の葉っぱと、桐の花が描かれています。

千葉県に在る香取神宮さんのお守りにも、しっかりと描かれています。

パスポートや、首相の演説のときの演説台の前に描かれている模様です。

天皇家が菊の御紋なら、政府の紋はこの五七の桐です。ですがおもしろいことにデザインしたのは1200年前の嵯峨天皇(さがてんのう)

 

菊の御紋の使用は皇室関係に制限されていますので、政府は五七の桐を使うことにしました。室町時代のことです。そのため室町時代の小判にはこの五七の桐が刻印されています。

その流れで当然、江戸幕府の文様にもなりました。そして今の政府もまた、当然この五七の桐の文様をつかいます。つまり桐の花は国花でもあるわけです。

着物にもこの五七の桐の文様をほどこしたものありますが、必ずその家系上に、政府に対しての功績をなした者がいる場合だそうです。となると当然火鉢でも。

作りは無骨にみえますが、四角にくり抜いた後、表面を全て手で削って曲面をだしています。そして4箇所にある五七の桐。まさに徳川幕府にたいして功績を残した者のいるお家柄なのでしょう。そこで使われていた可能性が非常に高いです。少なくとも庶民が使用する文様ではないので、それ相応の使われ方がしていたと思われます。時代も時代ですが、模様も模様なので、いろいろな意味で貴重な火鉢だと断言いたします。

なお、この鉄でつくられた取っ手の造作などは、いかにも江戸時代に好んで作られた作風です。隅々まで江戸の空気感をお感じいただける楽しい火鉢でございます。