鍛冶仕事で出来上がる火箸(ひばし)
火箸は火鉢や囲炉裏でつかうお箸です。
茶道でもつかわれます。
その茶道具の中には、利休好みというものがあります。
これは千利休さんが「これは良いよ」と太鼓判を押したものを言います。
たとえばクヌギ炭でも、利休さんはいっぱい研究して最高の焼き方を発見しました。
その焼き方で焼いた椚炭を「利休の二度焼きのクヌギ炭」と言います。
このように、お茶道具には沢山「利休好み」があります。
この桑柄柄の火箸もその1つ。というか代表格です。
そして利休好みの火箸は、鉄の棒ではアリません。
鍛冶屋の田中さんが、鍛冶仕事でトンカンと熱した鉄を打って丸くします。
鉄瓶の取っ手。弦も本来は中が空洞です。そうするとお湯が沸騰しても
取っ手は鉄なのに熱くないからです。
同じことを火箸で行います。だから桑柄の火箸に限らず田中さんの鍛冶仕事で
つくられた火箸は中が空洞なのです。現在は日本に一人しかいない鍛冶屋さん。
(兵庫に明珍火箸をつくる明珍さんもいらっしゃいますがこの方は甲冑職人さんです)
桑柄の火箸の特徴
虫喰の穴
ちょっと画像を大きくしましたがお分かりになるでしょうか。
虫喰の穴が空いています。
虫が喰った後は、年月を思わせるということで、ワビサビの1つとして代表的です。
なんとこの虫喰。
ヨーロッパの絵画の額縁にもあります。
だから虫喰のワビサビについては外国の人もわかるということなんですね。
そしてこの虫喰。鍛冶仕事でつくられた火箸や、灰ならし、鉄瓶の取っ手には必ずあります。
これこそが日本の鍛冶仕事の真骨頂。利休さんもこの虫喰にはこだわったのかもしれません。
桑柄
桑柄の火箸なので桑柄が特徴です。
こけし職人さんがこけしと同じ要領でつくります。
ちなみにこの持ちての微妙な曲線部分は、
作るときに毎回微妙に異なります。
これを職人さんに「こういうのがいい」とお願いしたことがありますが、
まったくできませんでした。意外と出来ないものらしく、その時のこだわりが
あるのでしょうか。でもとにかく綺麗です。
桑の柄は熱に強く、火鉢にいれたままにしても持ちては熱くはなりますが
持つことが出来ます、これが鉄だと火傷します。
また真冬は最初に火箸を触る時に「ヒヤッ」としますが、それもありません。
そういった実利的な便益もえられるのがこの桑柄の火箸です。
あらゆる処理が見事な桑柄の火箸。
骨董屋さんでたまに古い桑柄の火箸がでてきます。
値段は3,000円〜5,000円程度なので、こういったものを見つけると楽しいです。
長さは自由だけど、九寸五分くらいがベスト
手仕事なので長さは自由に変えられます。
以前、囲炉裏様に35cmというのを作ったことがアリます。
でもなぜ28cm〜29cmが一番しっくり来るのかわかりました。
九寸五分といって、日本人にっっては昔から馴染み深い長さなのです。
利休好みの火箸に、他のサイズが無いのもうなずけます。
ヨーロッパには黄金比というのがありますが、
日本には白銀比というものがあるようなものかもしれません。
もちろんご希望があれば長さオーダーは可能ですのでおっしゃってください。
最後までお読み頂きありがとうございました。