龍文堂 姥口 袋鉉

【本物の龍文堂を、飾るためではなく使うために】

龍文堂造 姥口鉄瓶
戦前期の作/銅蓋/袋鉉
替え底・黒漆塗り直し・完全修理済み 
販売価格 39,800円

サイズ

直径 16cm
蛇口 17cm
高さ 22cm
口 8.5cm
重量 約1.8kg

この鉄瓶には、ひと目で人を驚かせるような派手さはありません。

けれども、丸く穏やかな胴を眺め、銅蓋の古色を見て、細く立ち上がる鉉へ目を移すと、京都の鉄瓶らしい端正さが、じわりと伝わってきます。声高に古さを誇るのではなく、細部の釣り合いによって品格を見せる鉄瓶です。

昭和の一桁、戦前期につくられた龍文堂の一口。

もとは中国茶の先生が所有されていたもので、ご依頼を受け、実際に使い続けられるよう完全修理を施しました。その後、所有者様が手放されることとなり今回ご紹介するものです。

古鉄瓶ですから、修理をしていない当時のままの姿を尊ぶ見方もあります。

しかし、鉄瓶は本来、床の間に置くだけの道具ではありません。水を入れ、火に掛け、湯を沸かしてこそ生きるものです。

本品は、その「使う」という一点を大切にして手を入れています。

 

吾輩は猫であるに出てくる龍文堂

龍文堂といえば「なにか特別な時に使う鉄瓶」というイメージが昔から定着しています。

『吾輩は猫である』第五章に、以下のくだりがあります(表記は「竜文堂」)。

思うにこれは主人の病気で贅沢な人が竜文堂に鳴る松風の音を聞かないと寝つかれないごとく、

主人も書物を枕元に置かないと眠れないのだろう。

これは、主人(苦沙弥)が寝る前にいつも本を何冊も枕元に抱えてくる癖について、語り手の猫が「吾輩」の視点で分析している場面の一文です。ここでの「竜文堂」は「贅沢な人」が茶を点てる際に鉄瓶(松風の音=湯が沸く音)を愛用する高級ブランドとしての比喩表現として使われており、当時すでに龍文堂(竜文堂)の鉄瓶が高級品の代名詞として知られていたことがわかります。

なお、龍文堂は江戸末期から昭和33年頃まで8代続いた京都の鉄瓶工房で、初代四方龍文が蝋型鋳造による鉄瓶製作を創案し、京鉄瓶の礎を築いたとされています。

 

■ 姥口ならではの、本体と蓋の緊張感

本品は「姥口(うばぐち)」と呼ばれる口造りです。

フタを上から乗せるのではなく、本体にぴったりとハマる。これが姥口です。

鉄瓶の口縁が内側へ静かに締まり、その内へ蓋がきっちりと納まります。

実は本体と蓋の寸法がよく合っていなければ成立しない、たいへん繊細な造りです。

 

一般的な鉄瓶は縦口とよばれるものなど、まず本体があり口の端が上に伸びています。

フタはその上に乗ります。

これですと寸法さえ近ければ合わせられる場合があります。

それゆえ龍文堂の偽物も多く流通しています。

 

しかし姥口は、わずかな違いでも蓋が浮き、収まりを失います。

本体の口と蓋とが寸分違わぬほどに呼応して、初めてこの静かな姿が生まれます。

写真をご覧いただくと、銅蓋が胴の内側へすっと落ち着き、口縁との間に不自然な浮きがないことがお分かりいただけると思います。

蓋裏には「龍文堂造」の銘があります。

龍文堂の名だけを追うのではなく、蓋の収まり、口造り、胴との均衡まで含めて見ていただきたい一口です。

 

■ 古い銅蓋が残す、時間の色

銅蓋には、褐色、赤み、鈍い金色が重なり合った古色が現れています。

表面には細かな斑が生じていますが、それは均一な薬品着色とは異なる、年月と使用によって育った景色です。黒く整えられた鉄の胴に対し、銅蓋だけが戦前からの時間を静かに語っています。

中央の摘みは、蕾あるいは実を思わせる立体的な造形です。丸い蓋の上に小さな花が開きかけたようで、装飾的でありながら華美には流れません。摘みの下にも花弁を思わせる意匠が添えられ、低い蓋の中央に、ほどよい高さと光を与えています。

胴の黒、蓋の古銅色、摘みの柔らかな金属色。この三つの色の重なりが、本品の大きな見どころです。

 

■ 岩肌のようで、どこか柔らかな鋳肌

胴は、低く丸みを帯びた形です。

千道安の好んだ道安型です。

文様は柚子肌に近い肌。

表面には細かな凹凸のある鋳肌が広がります。

霰のように規則正しく並べた文様ではなく、岩肌や長い雨に打たれた土壁を思わせる、不定形で深みのある肌です。光を正面から受けると黒く沈み、斜めから見ると細かな起伏が銀灰色に浮かびます。

この肌は、荒々しいというより、むしろ静かです。

とりわけ正面から見たとき、丸い胴の中央に光が集まり、外へ向かって暗く沈んでいく様子が美しく、黒一色の中にも豊かな濃淡があります。黒漆を塗り直しているため、現状では古い鉄瓶特有の赤茶けた印象は控えめですが、これから日々使うことで、艶が落ち着き、手元の道具としての表情が育っていくでしょう。

 

■ 京都・富山系の鍛冶仕事を伝える袋鉉

鉉、すなわち取っ手は、鍛冶屋が鉄を叩いて丸めた「袋鉉」です。

一枚の鉄を火に掛け、トンカンと打ちながら袋状に成形していくものです。大量生産の丸棒とは違い、表面には鍛えた跡が残り、わずかな起伏と揺らぎがあります。

写真では、鉉の内側に合わせ目の筋が通っているのが確認できます。これが袋鉉らしい見どころの一つです。

京鉄瓶の鉉は、盛岡の南部鉄瓶に多く見られる力強い鉉とは趣が異なります。特に根元が細く、胴の上へ軽やかに立ち上がるのが特徴です。

本品も、胴の量感に対して鉉の足元がすっと細く、上へ行くにつれて自然な丸みを描いています。重量のある鉄瓶を支えながら、見た目には重さを感じさせません。この太細の呼吸に、京都の鉄瓶らしい繊細さがあります。

こうした鉉をつくった京都や富山の鍛冶屋は、現在ではほとんど残っていません。

鋳物師がつくる胴、金工師の銅蓋、そして鍛冶屋の鉉。異なる職人の仕事が一つの道具の上で釣り合っているところにも、古い京鉄瓶の面白さがあります。

 

■ 替え底について

本品は底を交換する「替え底」を行っています。

現在の底は製作当初の底ではありません。

元の底を丁寧に型写しし、元来の姿を崩さないよう仕立てたものです。

底面の形状や周囲とのつながりも自然で、外観からは修理箇所が目立たない仕事になっています。

 

一度目の替え底後、接合部から水が漏れることがあったため、さらに重ねて修理を施しました。

当初、できるだけ薄く底を作ったため接合部が熱により緩むことがありました。

その後再度、少し厚みのある底荷しました。

結果的に末永く安心してご利用いただけるようには再生されましたが、1.8kgの重さになりました。

少し重く感じると思います。

 

現在は水漏れのない状態まで確認しています。

底が新しくなったことは、日常で使う鉄瓶として見れば最も傷みやすい箇所を直し、再び火に掛けられる状態へ戻したということでもあります。

修理歴を含め、これから実際に使っていただくための龍文堂です。

 

■ 黒漆を塗り直しています

胴の外側は黒漆を塗り直しています。

そのため、戦前の鉄瓶にしばしば見られる、表面の枯れや赤錆、長い年月による褐色の古色は強くありません。外観だけを見れば、戦前の作とは思えないほど整っています。

一方、銅蓋や鉉には従来からの古さが残っています。

これから使い込むにつれ、漆の艶も少しずつ落ち着き、ご自身の時間が加わっていきます。すでに完成された古色を眺める鉄瓶というより、ここから育てていく鉄瓶とお考えください。

 

■ 修理後の慣らしは完了しています

替え底や内部修理を行った鉄瓶は、修理直後にただちに良い湯が得られるとは限りません。

何度か湯を沸かして内部を落ち着かせ、匂いや濁りの有無を確かめる「慣らし運転」が必要です。本品は、この慣らしをすでに済ませています。

お手元へ届いてから、修理後の調整を一から行っていただく必要はありません。このまま実用品としてお使いいただけます。

それでも、一度だけお湯を沸かして捨ててください。

これで大丈夫です。

内部には古鉄瓶らしい変色や、部分的な錆の痕跡が見られます。新品のような均一な状態ではありませんが、実用確認を行ったうえでのご紹介です。

■ 火の扱いについて

最もおすすめする熱源は、火鉢の炭、または電熱線式のコンロです。

電熱線コンロは5,000円前後でAmazonでもホームセンターでも売られています。

昔から安全装置付きのガスコンロ五徳r者です。められるものもあり、火力が穏やかで、古鉄瓶の底へ急激な負担を掛けにくい利点があります。

卓上IHヒーターも、機種との相性はありますが、必ず弱火設定からお使いください。

本品は底を修理したことで実用できる状態へ戻っていますので、ガスコンロも弱火であればお使いいただけます。ただし、炎が底から大きくはみ出すような強火は避けてください。

鉄瓶は強火で急いで沸かすより、穏やかな火でゆっくり育てる道具です。

特に替え底の鉄瓶では、急加熱や空焚きは修理箇所へ負担を掛けます。水を入れずに火へ掛けること、熱い鉄瓶へ急に冷水を入れること、沸騰後も長時間強火を当て続けることはお避けください。

使用後は湯を残さず、余熱で内部を乾かしてください。内部を布やたわしでこすらず、洗剤も使用しないでください。

■ 重さについて

重量は約1.8kgです。

小振りに見える姿に対して、手に取るとやや重さを感じます。水を入れればさらに重量が増しますので、軽い鉄瓶をお探しの方には向かないかもしれません。

しかし、この重さが低く丸い胴に安定感を与えています。卓上に置いた姿が落ち着き、細身の鉉との対比によって、胴の豊かな量感がいっそう際立ちます。

ご購入前には、満水時の持ち運びも含めてご検討ください。 1.2Lほど入るのですが八分目まで入れるのが一般的です。お水を入れた重さは2.2kg~2.3kg位になると思いますが、空の重さが平気でしたらお水を入れた重さは気にならない可能性大です。

■ 価格について

本来であれば、5万円以上のお値段になる龍文堂です。

しかもこちらの本品は、替え底をして今後数十年は安心して使えるようにしてあります。

修理費用は実は約80,000円かかっております。

利益を考えたらまったくですが、持ち主の方のご好意により39,800円でご紹介いたします。

 

■ 今後の水漏れについて

現在は修理および慣らし運転を終え、水漏れなく使用できることを確認しています。

ただし、古い鉄瓶であり、しかも替え底を施した品です。新品の工業製品と同じ意味で、将来にわたる完全無欠をお約束することはできません。

万一、通常のご使用中に再び水漏れが生じた場合は、初回は無料で修理致します。弊店へお送りいただく際の送料だけご負担ください。

二度目以降はご相談と状態の上でうえですがおそらく数年後になるでしょう。

恐らく無いとおもいますがもし二度目の修理となりましたら5,500円で対応致します。

通常修理38.000円とくらべても原価にもみたしませんが対応させていただきます。

ただIHヒーターを火力(中)以上でお使いの場合、またストーブなどでお使いの場合は修理ができないケースもありますのでご注意ください。

 

もともとの龍文堂よりも底はしっかりしいますのでほぼ大丈夫ですが念のため。

 

■ 最後に

本物の龍文堂を、ぜひ一度お使いください。

低く丸い胴。静かに荒れた鋳肌。ぴたりと納まる姥口の銅蓋。蕾を思わせる摘み。そして今は作れる鍛冶屋がいなくなった非常に繊細で細身の袋鉉。

盛岡の鍛冶屋にもできない仕事。

 

黒漆を塗り直し、底も替えていますから再生としては完璧です。

本来は眺めるだけの龍文堂を、日常使いできるまでに致しました。

是非特別な日にお湯を沸かして楽しまれてください。

 

龍文堂の端正さを眺めるだけでなく、その湯を味わっていただける方へ。

次の年月を、この鉄瓶とともに重ねていただけましたら幸いです。

【商品概要】

・龍文堂造
・戦前期の作
・姥口
・古銅蓋
・蓋裏「龍文堂造」銘
・花蕾形の摘み
・鍛冶仕事による袋鉉
・重量:約1.8kg
・替え底済み
・底部接合箇所の再修理済み
・外側の黒漆塗り直し済み
・修理後の慣らし運転済み
・水漏れ確認済み
・販売価格:39,800円

※古い鉄瓶には、時代による錆、変色、擦れ、細かな傷、鋳肌の不均一などがあります。これらを古作ならではの性質としてご理解のうえ、お求めください。 また古い鉄瓶独特の
※強火、空焚き、急冷は厳禁です。火鉢の炭または電熱線コンロでの穏やかな加熱をおすすめします。ガスコンロ、卓上IHヒーターを使用する場合も必ず弱火からお使いください。
※IHは機種によって反応や加熱状態が異なるため、すべての機種での使用を保証するものではありません。
※重量は約1.8kgです。水を入れた状態では相応の重さになります。

¥39,800

在庫切れ

カテゴリー: