買い取り道中記|蔵出しの旅へ

兵庫県への買取の道中記の画像

買い取り〜蔵出し道中記

こんにちは番頭の三浦です。
今回ブログは買い取りの旅になります。

1.買取の旅へなぜ行くことになったか。

きっかけは鉄瓶の修理でした。

昨年の夏に鉄瓶2つの修理をご希望のお客さまがいらっしゃいました。
2つとも銀の象嵌(ぞうがん)いりでした。

この2年ほどで200個ほどの修理をしておりますが
20個に1つ位の割合で物凄く良い鉄瓶をお預かりします。

今回の2つもそれに該当します。

銀の象嵌の鉄瓶。
ちなみに象嵌とは、工芸品の装飾技法のこと。
金属や木材だけではなく、陶磁器やガラスといった素材にも象嵌材をはめ込んで作られることがある。
とあります。
銀を埋め込む感じです。
こちらがその鉄瓶2つです。

龍文堂です。

龍文堂の銀の象嵌の鉄瓶

 

こうした時代物の象嵌の鉄瓶は、現在のなんちゃって象嵌と違い非常に細かくまた密やかに作られています。

ただ象嵌の入った鉄瓶の修理は難しいので大変気を使います。
とりあえず修理も終わりお客さまにお戻しいたしました。

そのお戻しの際にこの見事な鉄瓶の経緯を伺いました。

すると、

お客さまは価値ある鉄瓶であること自体ご存知無く、
そして蔵にもっと沢山のものがあったこと。

それらを怪しい買取業者がきてほとんどタダ同然でもっていってしまったこと。

など伺いました。

 

そこで番頭のワタシがお伝えしました。

「私達は先に品物を預かり、然るべき専門家たちに正しい金額で買い取ってもらい、売れた金額から手数料をさしひいたぶんの金額をお渡ししています。」と。

 

これは最も多くのお金をお渡しできる方法なのです。

最初から取引相場のわかる品物の買取の場合はその場で金額がわかりますが多くの骨董品はその場ではなかなか判断がつかないもの。

そういうケースでは「まとめていくら」で買い取ったりします。

さらに言えば「価値ないものだからほとんどタダ同然」という言い方もできてしまいます。

実は物凄い価値あるものが含まれているかもしれません。

あとから「高く売れたからもっとお支払いします。」という善良な骨董屋さんあいてならよいですが仲々そういう骨董商はめずらしいものです。

ちなにみ西荻にある私が尊敬している某骨董商の大先輩はまさにこのやり方です。

こうしたお話を象嵌の鐵瓶のお客さまにお伝えしました。

「それならば蔵にあるものを持っていってほしい。」

と言うことになりまして兵庫県まで伺うことが決まった次第です。

実を言うと遠方ですので1ヶ月ほどお断りしておりました。
でも結果的にはがんばって遠出してよかったです。

おかげさまで元旦火鉢にも物凄いものをご紹介できました。
と、その話はまた後ほど。

遠方ですので仲間と行くことにしました。

掛軸専門の阿部寛に似ている阿部さんです。

 

2.買取の旅プラン どのようなプランをたてたか

場所は兵庫県の北端。
現在地からはGoogleマップの経路案内で9時間ほどになります。

お客さまからは「2トントラックでないと乗り切らないよ。」
とのことでしたが事実のようでした。

なぜなら事前のお写真で確かにハイエースでは100%無理な量でした。

掛け軸だけで30本あまり。
2mある屏風などもありました。

さて、どうなることやら。

 

【買取の旅の予想というか計画】

1日目:夜通し走って昼前に現地に到着。
2日目:作業をして日暮れまでに出発。
3日目:夜通し走って朝方に到着。

某市場へ直接乗り込み専門家にみてもらう。

こうした予定を立てました。

なお私は茶道具、阿部ヒロシは掛け軸と紙類が専門。
それ以外のものはあとあと各専門家に見立ててもらう予定です。

 

3.買取の旅の体験   移動中に見たもの、感じたもの、トラックの運転について

トラックはニッポンレンタカーにて2トントラックのショートというものを借りました。

明らかにサスペンションではなく板バネトラック。
自分で運転していても酔うことのある番頭は不安です。

とりあえず気持ちが大事。
豊川稲荷東京別院さんでいただいてきたお清め塩をかけます。
道中守りも持ちました。

阿部さんがくるのをまって出発です。

 

【移動】

正直のんびりドライブを楽しむ余裕はなしです!
風も強くトラックがヨコ風邪を受けやすい上にボヨンボヨンはねます。

100kmもだすと空中分解するのではないかというほどの騒音と振動でした。

阿部さんは中古のメルセデスにのっています。
あの車で行きたかったと激しく無駄な考えをしつつひたすら走ります。

明け方に京都の北部。
丹波のSAにつきました。

恐ろしく寒くてびっくりしました。
八王子より寒いなんて!

霧もすごくて。。。
晴れているのに霧というのを始めてみました。

霧の都ロンドンとならぶとされる京都の丹波とか兵庫県の豊岡なんだそうです。

途中ガソリン(経由)が乏しくなりまたSAも無くて下道に降りました。
そこで通りかかった沼?がとにかくすごかったです。
阿部さんはよからぬものを感じるとかいって怖がっておりましたが外でしっかり写真を撮っていました。
その後「この写真はすてたほうがよさそうだ」とつぶやいて消していました。

その沼の写真がこちら。

 

この沼に出会ったからかこの後は良い事だらけで無事に帰路につくわけですが。

 

4.観光スポット・・・無し!  けど皇大神社さん

行き帰りととくに観光スポットなどはなく。
ひたすら緊張しつつ行ってきたわけですが。

このような遠方へ来るまで来ることはなかなか無いので是非寄りたいところがありました。

それは皇大神社というところです。

元伊勢と呼ばれる、伊勢神宮が今の場所へ移る以前にあった場所とされるうちの1つです。

私が大好きな桜井識子さん(神社仏閣系の著者さん)はこの皇大神社さんだったと思われるそうです。

籠神社さんというのもあるのですがこちらは無理でした。

でも皇大神社さん。

本当に行ってよかったです。

「これは呼ばれて来たなぁ。」と私が言いましたら阿部ヒロシがすかさず言っていました。

「いや。三浦さんが行きたがったから来たんですよ。」 と。

 

皇大神社さん

http://motoise-naiku.com/

 

5.宿泊先 なし ただし途中で仮眠

阿部ヒロシとは2時間おきの運転交代でしたが当然眠れるわけもなく。
結果的に帰りも助手席でうとうとしたくらいでしたので48時間の間ほぼ寝ることはありませんでした。

 

6.お客さまの蔵での買取の様子

現地到着したのは10時ころでした。

そこはご実家であり普段は神戸にお住まいだとか。
先祖代々暮らしていた土地で大きな日本家屋と蔵で見事でした。
蔵は初めて入りました。

実はまともな買取も今回が初めてです。
そのため阿部ヒロシと一緒だったのですがこれが大正解でした。
私一人では荷物も多すぎますし目利きが難しかったです。

今後はこの買取をしてまいりますが火鉢と茶道具、鐵瓶以外はこの阿部ヒロシと一緒に行うことにこの時決めました。

さて問題は運び出しです。
日暮れまでに終わらせなければ。

動画はもちろん1つ1つの物品を撮影する時間などどこにも無いこと一目瞭然。
この兵庫県の北部は12月後半から雪だそうですがその寒い中汗だくで作業させていただきました。

無事日暮れ前に積み込みが終わりましたがそれでも蔵の中にまだ荷物は残っていました。

この時によく見ずに積み込んだ火鉢がいくつかあったのですが後に開封して「すごい!」ということがわかります。
うち1台は香木で作られた火鉢だったのです。

 

 

7.買取の旅の感想  全体的な感想

蔵にあったものは先に買取業者がタダ同然で持っていた後に残ったものでしたがものすごい量でした。
また中にはしっかり貴重なものが入っておりました。

ただその中の何一つ、私には正直に申しまして金額的には価値がないようにしか見えませんでした。

うち1つをご紹介します。
残念ながら写真が1枚もございませんが火鉢です。

私には火鉢に思えませんでした。

金属の薄い頑丈な器のようなものです。
周りに色々模様が彫られています。

どう見ても火鉢ではないのですがこちらは4万円で古美術商が引き取ってくださいました。
尋ねるとこれは火鉢なのだそうです。
「めったに目にすることもない見事な火鉢で10万円でもやすかったのに4万円で手に入れられてよかったよ。」

とのことでした。

未だにアレが火鉢であったこと、それほどの価値があったと思えていないところに番頭のセンスの無さが見て取れます。

【掛け軸が専門の阿部ヒロシ君の感想】

掛け軸のケースだけ残っているものはもしフタの但し書きがそのままなら物凄いことになっていました。
あとはどれもホンモノに見えて贋作(がんさく)つまり偽物。

恐らくご先祖様は日本画家のパトロンになっていたと思えること。
そのために贋作だけどよく出来た掛け軸ということで大量に購入してあげていた。
ただ中には本当に名の通った作家のものもあったがそれは前の業者がもっていってしまったのだろう。

とのことでした。

もしホンモノがあれば7桁を軽く超えたそうです。

なお他にもボロッボロの紙やスダレが数万円でしたがかなり安く手に入れれたと皆さん喜んでおられました。

こうして全てのお荷物を古美術商さんたちに引き取っていただき、お代をお客さまにお振込みいたしました。

もちろん番頭と阿部ヒロシ君が引っ越し屋さんとして動いた分の手数料と高速代などを差し引いてありますがそれでもお客さまは「こんなにもらって良いんか?」とおっしゃっておりましたので良かったです。

 

8.無事到着

最終的に各専門家のあつまる市場についたのが3日めの午前9時5分。

本当に予定通りというかギリギリでした。

荷物を周りの人たちの助けを借りて運び出したりして最終的に作業終了はお昼ころ。

車を返しての帰宅はまさに20時でした。

3日前の20時に出発して到着も20時。

帰りの富士山がいまでも印象的でした。

なんか上に丸い雲がありました。

 

8.そして元旦火鉢へ

こちらが香木の火鉢でございます。

香木で作られた火鉢 超超レア!香木と黒柿と桐が使われています。

元旦火鉢として登場したものでしたがすでにお客様のもとへ。
こちらがそのお写真です。

素敵です。。。

以上が買取道中記でした。