火鉢に使う炭が、もう手に入らない — 福島原発、ウクライナ戦争、そして火鉢屋が20年かけて辿り着いた答え

正直に言って火鉢に一番いい炭は、くぬぎ炭です。

茶道で使われる正統派の炭で、千利休の時代から焼き方が確立されている。利休の二度焼きと呼ばれる製法で、いぶされていない(煙臭さがない)、くぬぎ独特の香りがある炭です。

でも、もう手に入りません。

正確には、年に数箱しかご用意できないからです。
それも、茶道用のくぬぎ炭を焼いた「余り」です。

なぜこんなことになったのか。

福島原発で、炭窯50基が全滅した

くぬぎ炭が手に入らなくなった第一の原因は、福島原発です。

福島では、日本で一番ものすごい量のくぬぎ炭を焼いていました。炭窯が50基もあったんです。

でも、福島原発の事故で、炭窯が全部全滅してしまいました。

職人さんたちは四国に移住して、焼き始めました。
でも、山の権利の問題や、くぬぎが育ちすぎていたりして、なかなか思うようにいかなかった。

生産量は、福島の時の半分、もしくは6割ぐらいになりました。

 

 

ロシア・ウクライナ戦争で、くぬぎが住宅用に消えた

それでもまだ、なんとか焼けていました。

ところが、ロシア・ウクライナ戦争が始まりました。

住宅用の木材がロシアから全く輸入されなくなり、ゼロになってしまったんです。

そうすると、国内のくぬぎの木が、住宅用の木材として大量に切られた。

住宅用の木材は、木こりなんか使わないで機械でやります。しかも住宅用の建材なので、高く買われてしまう。

炭のために、住宅用の売買に競り勝って木を手に入れようとすると、くぬぎの値段が5倍以上になってしまう。

それは現実的じゃない。
たとえば、4000円の炭の箱は、2万円になってしまう。

もう誰も使わないので、茶道や火鉢では使えなくなってしまいます。

 

 

木こりがいない。炭文化自体が、あと20〜30年

今、とにかく木こりが頑張って切ってるけど、炭焼き職人以上に木こりがもういない。

平均年齢がもう60歳を超えている。

それを見ても、炭文化自体があと20〜30年と言われています。

 

 

福島50基の頃と比べて、今は1〜2割

そんな中で、大ダメージを受けて。

福島に炭窯が50基あった頃と比べると、今の生産量はもう1割とか2割。

これがしばらく続きます。職人とか木こりが増えない限り。

くぬぎの木自体も、炭窯の近くになくて、遠くから持ってこなければならなくなって、それも炭の値段の値上がりにつながっています。

 

 

だから、火鉢屋は楢(ナラ)炭を研究した

くぬぎ炭が手に入らないなら、別の炭で利休の二度焼きを再現できないか。

火鉢屋は、5、6年かけて、楢(ナラ)炭を研究しました。

楢の木とくぬぎの木は、外見ではほとんど見分けがつきません(葉の形がわずかに違う程度)。
でも、炭にすると明らかに違います。

  • 皮が薄く、妙に綺麗
  • 菊のような細かい切り口にはならない
  • 使い慣れた人やお茶の先生なら、見ればすぐわかる

とはいえ、利休の考えた焼き方が今でもベストという、なかなかストーリーのある炭です。

職人たちが5、6年かけて研究し、かなりくぬぎ炭に近づいたと評価されるようになりました。

 

 

そして、備長炭を1つ混ぜると、最高の冬が楽しめる

楢(ナラ)炭だけでも十分ですが、そこに1つでも備長炭を混ぜると、最高の冬が楽しめます。

備長炭には伝統的に25種類以上のランクが存在します。最上位の「上小丸(じょうこまる)」は太く硬いウバメガシを使った高級品ですが、火鉢での日常使いにはむしろ「アラ(小片)」や「不揃い品」のほうが扱いやすいのが実際です。

火鉢屋では、不揃いくんと横綱くんの2種類を扱っています。

不揃いくん — 火鉢の実用No.1

カシ類の備長炭。ウバメガシよりやや柔らかく、着火しやすい+備長炭の高熱量を両立。火鉢初心者でも扱いやすく、約800℃前後の安定した火力が得られます。

今季は新窯増設により昨年より最大1,600円安くご提供中。

横綱くん — 最上級の火力

ウバメガシの備長炭。硬く、燃焼時間が長い。約1000℃前後の高熱量で、お湯を沸かすにも十分な火力があります。

 

 

火鉢屋が20年かけて辿り着いた答え

火鉢に一番いいのは、くぬぎ炭。
でも、もう手に入らない。

福島原発で炭窯50基が全滅し、ロシア・ウクライナ戦争でくぬぎが住宅用に消え、木こりの平均年齢は60歳を超え、炭文化自体があと20〜30年と言われている。

だから、利休の二度焼きをした楢(ナラ)炭をおすすめします。
そして、そこに1つでも備長炭を混ぜると、最高の冬が楽しめます。

利休の時代から続く製法と、今も進化し続ける職人技。
火鉢屋は、その両方を大切にしています。

この炭文化は日本文化の真髄です。

 

なぜ炭文化=日本人のDNA 日本文化の真髄なのか

 

中国でくぬぎ炭。

同じことをやろうとしたことがあります。

農林水産省もJAICAも協力して植林をめざしました。

植林は30年かけますが10年ともたず途中で辞めてしまいます。

30年以上経つと木が太すぎて炭にできないのでこの30年がポイント。

でもこれはDNAの問題なのか、どうしてもそのサスティナブルなことが苦手様子。

とうとう炭焼き文化を根付かせることが出来ませんでした。

 

今ではあの広大な中国も山の木をほとんど切ってしまい法律て炭焼きがほぼ禁止されました。

結果今はインドネシア、マレーシア、ミャンマーでも備長炭を焼いています。

もちろん樫の木は無いのでマングローブです。

そこでも切ったら終わり。

植林などという手間のかかることは日本人以外出来ないようです。

 

これが私が、炭文化は日本文化の真髄と考える理由です。

 

火鉢をつかう方がいる限り、茶道文化が残る限り炭文化も残ります。

是非毎年の秋〜冬は火鉢のある暮らしをお楽しみください。

 

最後までお読みいただき有難うございました。

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