サイズによる火鉢の違い

手焙り火鉢のイラスト

手炙り火鉢

幅1尺以内(30cm前後以下)は手あぶり火鉢と言われます。

長火鉢

幅2尺(約60cm)以上の長方形で引き出しのある横長の大型火鉢のこと。テーブルの有るものが関西火鉢。猫板のあるのが江戸長火鉢です。

豆火鉢・箱火鉢

幅1~2尺の火鉢。およそ35cm〜50cm以下のサイズで特定の名称はありませんが箱火鉢や豆火鉢などの呼び名があります。

長火鉢の種類と特徴

江戸長火鉢

現代では関東火鉢ともいわれますが元々は江戸長火鉢。昭和30年ころまでは本当に関東圏にしかありませんでした。

主にケヤキと黒柿の組み合わせが主流。猫板とよばれるスペース(画像だと茶器がのっている引き出しの上の部分)がありその上に板がのっています。

この猫板をテーブル代わりに使い湯呑をのせていました。なお本当に猫が乗るので猫板と呼ばれていました。

長火鉢の両側にある取っ手は雲のような形をしているので「雲」と呼ばれます。

昔は部屋の中で最も乾燥している場所なのでタバコ、海苔など入れていました。画像の引き出しの有る側が裏面。

お客さんが目にする面が表面です。

江戸長火鉢の猫板を使っている様子

江戸長火鉢はケヤキ板の厚みと杢目(もくめ)で価値が決まりました。黒柿だけの火鉢も珍重されました。玉杢という杢目は1つ1万円で計算された時代も。さらに希少な如鱗杢(じょりんもく)という杢目もあります。

過去最高の長火鉢が登場の予定ですがまだ準備中でございます。

関西火鉢

関西のスタイルということで関西火鉢。骨董の師匠いわく物流が発達するまでは関東に関西火鉢があること、関西に関東火鉢があることはは絶対になかったそうです。

関西は合理性を追求。当然のようにテーブルがつきます。このテーブル部分の厚みで価値の差が生まれます。

特徴1.テーブル部分は本体部分に上から被せてのせてあり固定はされていません。関西火鉢の良いものは現代では希少です。なぜか杢目にこだわりはなく基本的にシンプルな杢目が好まれていました。

特徴2.引き出しに取っ手は付いていません。唐物つまり中国の作風の影響を強く受けた掘り出しの引き出しも関西火鉢の特徴です。

見事な関西火鉢

手あぶり火鉢

手炙り、手焙りとも呼ばれます。ときに瓶掛(びんかけ)と呼ばれる手焙り火鉢もありました。上に鉄瓶をのせて移動させるときに楽なように高さを低く(20cmくらい)したものを瓶掛と呼ばれます。

多くは陶器の火鉢ですが木製の火鉢もあります。江戸時代〜大正時代までは木製の手焙り火鉢は2台1組で作られます。蔵にはこれ20組、25組入っているのた常でした。

木製火鉢は指物師がつくるもので、武家屋敷や商家からの依頼があって初めて作ります。昭和30年ころまでつくられていました。今ある木製の火鉢は殆んどが明治〜大正のものになります。現在もつくることはできますが1つ20万円ほどします。

ケヤキ、黒柿との組み合わせが最もポピュラーで、他にシタン、黒檀、桑の木などは高級木材として今も価値があります。引き出しは基本ありません。

お客様の手あぶり火鉢と猫と鉄瓶
春慶塗火鉢と普通の手あぶり火鉢との比較
銀の象嵌のはいった塗りの手あぶり火鉢の画像。京火鉢

その他の火鉢について

煙草盆

茶道の待合や人の出入りする場所におかれるキセル用の火鉢

キセル用つまりタバコ用なので様々なスタイルがあります。中には全面象嵌(ぞうがん)のものなども。他にも様々な形があります。

スライダー画像の中の銀っぽいものは銀の象嵌(ぞうがん)が施された江戸中期の大名への献上品でした。

煙草盆
手炉または手あぶり火鉢 明治〜大正時代の七宝文様
煙草盆の写真

黒柿の火鉢

全面を黒柿でつくられた火鉢。手焙り火鉢もあれば江戸長火鉢もあります。ただ全面黒柿の関西火鉢は無いかもしれません。

黒柿は柿の木1000本に1本の割合で偶然見つかる墨の入った柿の木です。外見からはわからず切ってみないと黒柿かどうかはわからないそうです。ケヤキと共にトップクラスで固い木材でもあります。この黒柿は火鉢に限らず珍重されてきました。

写真の黒柿の長火鉢は釘が象牙で出来たもの。こうしたものも江戸後期〜明治期には作られていました。 手焙り火鉢で5〜10数万円が主流です。

黒柿の関東火鉢 象牙の釘

煎茶用の長火鉢

ちょっと珍しいのですが偶に見かけます。煎茶用の長火鉢です。木材の材質は桐がメインですが画像のようにそれ以外の木材もみられます。ただし江戸長火鉢のようにケヤキや黒柿はありません。 黒檀やシタンもありません。

桐か杉になります。このスタイルのものは煎茶用ですが珍しいので見つけたら確保しても良いと思います。

煎茶用の火鉢 かなり珍しい

陶器/金属の火鉢

火鉢といえば陶器の火鉢がイメージしやすいかもしれません。

他にも画像のブリキの火鉢などは昭和40年前後もしくは昭和の後期でもつくられていた可能性があります。他にも真鍮と銅の火鉢などがあります。これは中国や台湾でも人気です。

比較的安価で数千円で入手可能です。

手あぶり火鉢 第317弾 昭和10年ころのブリキの火鉢の画像
長火鉢の使い方・注意点

長火鉢の使い方(注意点)

  1. 直射日光を避けます。木材は常に呼吸しています。直射日光で板が反ってヒビが入ります。
  2. 表面にお湯や水がかかると取れないシミになります。水分がついたらすぐに拭きましょう。
  3. 灰の中に水をこぼしても灰は乾燥すれば乾きます。その点は平気です。ただあまりに大量の水分をこぼしてしますと銅の炉が痛みます。一旦灰を出して銅の炉が乾いていることを確認してください。
  4. たまに油を塗ってあげると良いです。アンティークワックスが理想ですが100円ショップのベビーオイルなどを薄く塗っても良いです。椿オイルなども良いです。
長火鉢の値段ってどのくらい?

長火鉢の値段

  1. 大きさや板の厚みや杢目にもよりますが5万円〜20万円が標準的な価格帯。良い火鉢と呼ばれるものは20万円〜70万円くらいまであります。
  2. 弊店で販売した過去最高が50万円を少し切るくらいでした。今回新しくお譲りいただけることになっている長火鉢が恐らく過去最高の50万円以上の価格がつくと思います。
  3. ヤフオクで購入する際は灰の入っている炉が撮影されていて穴があいていないこと。角に隙間がないことなどを注意しましょう。お掃除していないものですと中にGの卵があったこともあります。
長火鉢の修理について解説

長火鉢修理の様子

  1. かなり激しく壊れていた長火鉢を修理した時の様子を動画にしてあります。今編集中ですのでお楽しみに。

過去に販売した見事な長火鉢 記録アーカイブ

江戸長火鉢 第一弾

如鱗杢(じょりんもく)と孔雀杢の江戸長火鉢 最上級

玉杢と孔雀杢の江戸長火鉢

引き出しの上の黒柿部分が完璧な孔雀杢になっています。1000本に1本しかない黒柿の中の更に貴重な孔雀杢。孔雀の羽に似たことから名付けられています。この孔雀杢だけは本当に希少です。

ケヤキは玉杢ですが如鱗杢もまざる見事な杢目。うねっています。完全なケヤキ一枚板。猫板もオリジナルです。また炉縁という縁が大きいのも特徴で炉縁もおなじケヤキで玉杢入る見事な杢目でした。

江戸長火鉢 第二弾

玉杢と如鱗杢の最高クラス江戸長火鉢
玉杢と如鱗杢の最高クラス江戸長火鉢 如鱗杢が際立つ猫板
玉杢と如鱗杢の最高クラス江戸長火鉢の裏面 引き出し側

玉杢と如鱗杢の最高クラス江戸長火鉢

これが如鱗杢の代表です。この画像ですと小さめでわかりにくいので大きな画像も合わせてご覧ください。左の画像からリンクされています。特に猫板がわかりやすいのでスライダーにしてみました。

3Dに見える杢目が如鱗杢です。番頭の私の表現ではありますが3D以外の語彙力がございません。玉杢ではあるのですが更に奥行きが生まれたものです。御神木クラスの太さ、樹齢400年以上のケヤキの根元付近もしくはコブの部分に生まれるようです。

また黒柿も見事な厚みでこちらは幅80cm近い超大型でした。第一弾と同様こちらも最高クラスの長火鉢でした。

なお引き出しのない側が表面。裏面の引き出し側も見事です。3枚目のスライダーでご確認ください。

江戸長火鉢 第三弾

江戸長火鉢 第三弾 ケヤキと黒柿の長火鉢
玉杢と如鱗杢の最高クラス江戸長火鉢 如鱗杢が際立つ猫板
玉杢と如鱗杢の最高クラス江戸長火鉢の裏面 引き出し側

江戸長火鉢 第三弾

2023年9月25日現在更新中です。過去の画像を掘り起こし中ですお楽しみに。

最高の長火鉢を見つける一助になれば幸いです。