龍文堂の鉄瓶の中でも珍しい逸品の修理ビフォー・アフター

龍文堂の鉄瓶 修理ビフォー・アフター

こんにちは番頭の三浦です。

10年以上鉄瓶の修理を承っています。

ちなみに鉄瓶の修理のページはこちらです。

さて。

今回は龍文堂の鉄瓶の中でも特に珍しい鉄瓶をご紹介させていただきます。

龍文堂とは

京都の歴史ある鉄瓶製造工房「龍文堂」は、明和元年(1764年)頃に初代四方龍文が蝋型鋳造による鉄瓶製造を創案したことに始まります。

この技術は高級鉄瓶の製作において革新的であり、その後二代目四方安之助の時代から「龍文堂」の屋号が用いられ、昭和33年頃まで8代にわたり続きました。

いわゆる土の鋳型から鉄のみで造る鉄瓶が一般的な鉄瓶であるところへ、「ロウで型を造り複雑な模様を可能にした」「銅を削り出して蓋を作成。ツマミに作為を凝らした」などが京鉄瓶にしか見られない特徴であり当時の革新技術でした。

昭和に入ると銅の蓋は機械で製作されますが当時は削り出しで作成したようです。

龍文堂は京鉄瓶系の元祖とも言える工房で、その名声は明治、大正、昭和初期に日本中に広まりました。安之助は秦蔵六や亀文堂正平などの著名な弟子を抱え、彼らもまた細工の細かい蝋型鋳造による鉄瓶を製作し、高い評価を受けていました。

しかし、その名声ゆえに「龍文堂」と名前だけを彫った贋作が数多く出回るようになりました。本家の龍文堂が製造した鉄瓶は、本体に銘が入っていますが目にすることは非常に稀です。今回はその稀な龍文堂をご覧いただけます。

こちらは本体に銘の入った非常に珍しい龍文堂 本家でつくられた鉄瓶です。

殆どの龍文堂鉄瓶は蓋の裏にのみ、銘が入っています。

夏目漱石の「吾輩は猫である」にも高級な鉄瓶の代名詞として登場しますがそこでは「竜文堂」とされています。参考までにその一節を添付しました。

夏目漱石 吾輩は猫であるからの一節

思うにこれは主人の病気で贅沢な人が竜文堂りゅうぶんどうに鳴る松風の音を聞かないと寝つかれないごとく、主人も書物を枕元に置かないと眠れないのであろう、して見ると主人に取っては書物は読む者ではない眠を誘う器械である。活版の睡眠剤である。

注:病気とは執着が強すぎてまるであれは病気であるの意

龍文堂 本家の鉄瓶

こちらの龍文堂 本家の鉄瓶の修理のビフォー・アフターの様子はこちらの記事で御覧ください。

https://repair.hibachiya.com/repair_ironkettle/ryubundo-repair-html/

こちらの鉄瓶。

鉉 取っ手は純銀に木をはめ込んだもの。

ツマミも純銀で作られています。

さらに蓋も過去に触れたことのない重さの削り出しの蓋でした。

こちらで本体に 「龍文堂造」の刻印を見ることが出来ます。

なかなか珍しい逸品でしたのでご紹介させていただきました。

ご覧いただき有難うございました。

番頭三浦